なつくの気まぐれ日記帳

いろいろ起こったことや感じたことを書く雑記ブログです。

【小説】リーチ先生

陶芸青春小説

表紙のフォントが可愛らしい感じだったので、コメディかなと思っていたのですが、バーナード・リーチという陶芸家のお話でした。

主な登場人物

沖 亀乃介(おき かめのすけ)

横浜の食堂で働いていたところを高村光太郎に認められ、高村邸の書生になる。高村邸を訪ねてきたリーチと知り合い、以後行動を共にする。英語が堪能。

バーナード・リーチ

イギリス人。幼少時を日本で過ごすが後にイギリスに戻る。ラフカディオ・ハーンの本やイギリスに留学していた高村光太郎の影響を受け、来日。日本の陶芸を知り、傾倒する。

高市(おき こういち)

亀乃介の息子。父が亡くなったあと、遺言で大分県日田の窯元に弟子入りし、小鹿田焼を視察にきたリーチと出会う。

陶芸というアートを追いかける男たちの青春

物語は、高市が弟子入りした日田に、リーチが訪ねてくるところから始まります。
高市は亀乃介の息子なのですが、陶芸のことを教えてもらったことはほぼなく、父が亡くなりほぼ強制のような形で小鹿田(おんた)の陶工のもとに弟子入りすることになります。が、実際任されていることと言えば農作業ばかり。
そこにリーチが小鹿田焼の視察にくることになり、高市はリーチのお世話係を任されます。リーチに付き従って陶芸の作業を見ていくうちに陶芸への想いを深め、またリーチを通して父のことを思い出すようになる高市。そんな高市にリーチは言います。
「やっぱり、君はカメちゃんの息子でしたか」
ここから、父の亀乃介の話が始まります。

芸術という名の冒険

私は残念ながらアートにはあまり詳しくない残念な感性の持ち主なのですが、原田マハさんの小説はいつもワクワクドキドキしながら読んでいます。
それはやっぱり原田マハさんが書く登場人物たちが芸術という憧れを追い求め、悩んだりあがいたりしながらいろんな困難に立ち向かい進むことをやめないで、自分たちの芸術に向かって手を伸ばす──そこが私に刺さるのだと「リーチ先生」を読んでようやく気づきました。

「名もなき花」に思いを馳せる(ちょっとネタバレ)

名を残すこともなく、一陶工として九州で没した亀乃介。彼が何を思って各地を渡り歩き、そして所帯を持ち、子どもの高市に陶芸の道を託したのか。また、九州の地からリーチ先生やポタリーの仲間のことをどう思っていたのか…詳しくは書かれていないのですが、この本のことを思い出すたびに亀乃介のことを考えてしまいます。