陰謀渦巻く豊穣祭
物語は、入れ替わりから数ヶ月経ったところから始まります。目下の者にパワハラを行っていた自分を反省し、心を入れ替えて雛女としての研鑽を積み始めた慧月ですが、そんな彼女にまたもや災いが降りかかります。
追加の登場人物
雲嵐(うんらん)
南領の「賎邑(せんゆう)」と呼ばれる差別された邑で暮らす美貌の青年。慧月を攫っていたぶる実行犯役の1人。亡き頭領の息子だが、血はつながっておらず、実の父親は別の村の人間のため、雲嵐自身も「まざり者」と呼ばれて蔑まれている。
江氏(こうし)
今回の豊穣祭を行う地、温蘇(うんそ)を治める郷長。やせぎすで長い白髪を携えている。品が良い人物に見えるが、脱税して私服を肥やしている。慧月を攫うように持ちかけた黒幕の1人。
黄 景行(こう けいこう)
玲琳の長兄。優秀な武官で屈強な見た目。玲琳を誰よりも溺愛しているその①。
黄 景彰(こう けいしょう)
玲琳の次兄。こちらも優秀な次官。兄の景行よりもスラリとした見た目をしている。玲琳を誰よりも溺愛しているその②
【悲報①】豊穣祭、慧月の地元、南領に決まる
豊穣祭とは、物語の中では、立秋を迎えてすぐ、皇太子と雛女たちが最も気脈の乱れた地を訪れ、作物の豊作を祈る行事になっています。
基本的には妃任せにしていればいいのですが、朱家は朱 貴妃が追放されてしまったため、慧月が1人で取り仕切らなければならない事態に。
慧月は元々が貴妃の復讐のために雛女に選ばれたため、知識や経験が圧倒的に不足。また、自身が過去に行ったパワハラにより、女官も続々辞めていっている中で、玲琳の手を借りて豊穣祭を執り行おうと頑張ります。
【悲報②】慧月を攫っていたぶれば天災はやむってよ
豊穣祭が行われることになった南領は2年続いて不作続き。気脈が乱れているとのことで、豊穣祭が執り行われることになりました。
今、皇太子とかに来てもらったら脱税してることバレるかもしれんやん!と焦ったのが江氏。そこにもう1人の黒幕が唆す!
「不作は全部、朱 慧月のせいにして民に攫わせ、いたぶらせたら民の鬱憤は晴れるし、皇太子は誘拐騒ぎに巻き込まれて脱税の調査どころじゃなくなるかもよ?」
そこにちゃっかり乗った…いや、乗らざるを得なくなった江氏。実行犯は賎邑に住む雲嵐たちが受け持つことになりました。
なぜ、雲嵐たちなのかというと、尻尾切りをしやすくするためでもあったりします。
慧月を誘拐成功!(ただし中身は玲琳)
江氏の依頼により、慧月を攫うことに成功した雲嵐たち。ただ、その時には諸々あって玲琳と慧月は入れ替わったあと。しかも屈強な玲琳の兄、景行までついてくる始末。
前巻まで読んでいた読者には「あ、これ計画失敗するやつだ…」とまぁ一目で分かる展開です。
案の定、農作業に精を出しながら人はたらすし、看病もするしでやりたい放題やっているのが見ていて気持ちいいです。逆に雲嵐たちがかわいそうになってくる始末。雲嵐、何回かはぶん殴られてるからな。気の毒…。
玲琳と辰宇のやりとりが面白い
山に入って猪を捌いたあと、湯浴みする玲琳。それまで全く慧月たちと連絡が取れなかった玲琳ですが、ここでようやく慧月たちとのコンタクトに成功します。
しかし、ここで予期せぬ辰宇との絡みが。
本来ならここで「彼氏以外の男に言い寄られてドキドキ♡」みたいな展開になるところなのですが、そうはならないのが(?)この作品のいいところ。
読んでてめっちゃニヤニヤしました。
慧月の身の上
慧月のことをめっちゃパワハラ女扱いしていますが、読んでいて一番共感するのは慧月だったりします。作者の中村颯希さん、さすがすぎる。
慧月は、両親からもネグレストを受けて育ち、話し相手は炎のみの環境で育ちます。
いつしか炎を自在に操れるようになり、道術を会得した頃、両親は借金で首が回らなくなり慧月を遺して自死。朱貴妃に雛女として引き取られるものの、それは単に自身の復讐のために利用されただけでした。
朱貴妃が追放されたあとは、1人で朱駒宮を切り盛りするものの、自身がこれまで行ったさてきたパワハラや、元々の才能のなさを侮られていたこともあり、玲琳以外は冷ややかな態度…。そして今回の誘拐騒ぎ。
玲琳と入れ替わっていなければ、どうなってたことか…😨
玲琳、嫌われる悲しみを知る
今まではいくら慧月に罵られようが「新鮮🩷慧月様かわいい💖」とまるで相手にしなかった玲琳。ですが、仲良くなった村人に手のひらを返され罵られたことにより、初めて嫌われる悲しみを知ることになります。玲琳がこれからどう変わっていくのか、楽しみなところでもあります。
そしてこの巻の最後で、江氏の手にかかり、重傷を負ってしまった雲嵐。次巻では、慧月と玲琳、それぞれの戦いが始まります。