「ぎょらん」は何を遺すのか
「ぎょらん」とは
亡くなった人の「伝えたい、遺したい」という願いが形になったもの。赤黒く、珠の形をしている。その珠を口に含めば死者の最期の思いや願いを知ることが出来るらしい。「ぎょらん」は漫画や小説の中で登場したり、葬儀屋の中で別の名前で語られたりして都市伝説のようになっている。
主人公は「ぎょらん」に苦しめられるアラサーニート男性
御船 朱鷺(みふね とき)は大学生の時に自殺した親友が遺した「ぎょらん」を口にしてから引きこもりになってしまう。ニートになって10年近くが経過するが、妹の不倫相手が死んだことがきっかけになりニートを卒業。葬儀社に勤め始め「ぎょらん」の謎に関わり始める。
「ぎょらん」をめぐる7つの物語
ぎょらん
朱鷺の妹、華子(はなこ)の不倫相手が亡くなった。華子は自分は愛されていると思っていたが、実際は本命の不倫相手がいて、自分は相手にされていなかったのでは?と思い悩む。朱鷺は華子を連れ出し、不倫相手が遺した「ぎょらん」を一緒に探す。
夜明けの果て
夫を亡くした妻、喜代(きよ)。喜代は昔、保育士としての働いていたが自身が担当していた園児が亡くなったことにより退職。その後、高校時代の先輩、喬史(たかし)と結婚。喬史が亡くなり、葬儀のために選んだのは朱鷺が働き始めた葬儀社だった。そこで喜代は亡くなった園児の母親に再会する。
冬越しのさくら
朱鷺の先輩、相原 千帆(あいはら ちほ)。葬儀の仕事一筋に生きる千帆は、昔の恋人、瀬尾(せお)と再び仕事をすることに。そこに、お世話になった恩師の死が伝えられる。自分が葬儀を担当する、と息巻く千帆に、瀬尾から自己満足で空回りしていると責められ、自信を失ってしまう。
糸を渡す
朱鷺が勤める葬儀社の近くにあるコンビニでアルバイトをする女子高生、美生(みお)。彼女の一言が発端となり、美生の家庭は崩壊の危機に瀕していた。そんな中、ボランティアで訪れたグループホームで美生はそこの入居者、茂子(しげこ)と仲良しになるが、茂子は亡くなる。亡くなったあと、茂子のカバンの中から見つけたのは、若き日の茂子と子どもだった母親の写真。茂子は祖父の愛人だった。
あおい落葉
朱鷺の中学の同級生、小紅(こべに)。彼女には葉子(ようこ)という友人がいたが、葉子の束縛に嫌気が差す。また、葉子が母親の恋人とホテルに入っていくところを見てしまい、葉子と絶交状態に。仲直りする前に葉子は母親に殺される。後から、葉子は母親からネグレストを受けていて食べ物をもらえず、どうしようもない状況の中で母親の恋人の言う事を聞いていたことを知る。
珠の向こう側
朱鷺の母親が末期がんに。葬儀社を休職し、自室に閉じこもってしまう朱鷺。妹の華子はグループホームの七瀬(ななせ)と知り合いに。七瀬も自分の想い人が末期がんになっていた。朱鷺と華子が一緒にいた時、七瀬は「ぎょらん」の作者を知っていると告げる。朱鷺と華子は「ぎょらん」の正体を知るために七瀬とともに作者の家族を訪ねる。
赤はこれからも
書き下ろし作品。美弥(みや)は両親を早くに亡くし、姉の香弥(かや)と二人で暮らしてきたが、最近は姉の過干渉にうんざりしていた。かかってきた電話を無視しした5日後に香弥はコロナで亡くなる。コロナ禍の自粛期間で葬儀も行われない状態に。姉は色んなことを自分のために諦めてきた──そんな矢先「ぎょらん」のことを知った美弥は「ぎょらん」の存在を知る。
人間関係が…濃い!!
話の一話一話が重いんだけど読み応えがあり、とっても面白かった。一番好きな話は「あおい落葉」だけど「糸を渡す」は涙が止まらんかった。
「ぎょらん」を発見出来る人、というのは大体は故人と濃厚な人間関係を築いてきた人が見つけてる気がする。親友だったり親だったり姉だったり。葬儀屋がもらえる場合もあるけど。
水のようなうす〜い人間関係しか築いていない私にはまず「ぎょらん」は現れないだろうなあ…そう思うとちょっと羨ましいのか?いや、これで何十年も苦しんでいる人がいるので羨ましがるのは論外だろう…。
人生に後悔がないように生きるって難しいよねえ。正解とかないようなもんだし。
華子が強い
物理的に強い。「珠の向こう側」では朱鷺を文字通りぶっ飛ばしていた。怪力の設定いるんか?って思うけど、割と好き。絶対出る作品違ったやつ。
こんな力が強いのに、不倫相手の言う事何でも聞いてた華子ちゃん。愛の力ってヤバいな。