モラハラ野郎に負けてはいけない(ネタバレ多め)
主な登場人物
原田 澄子(はらだ すみこ)
58歳。モラハラ夫が嫌で離婚したいが勇気がなくて行動できないでいる。給食センターにパートで働いている。
千鶴(ちづる)
澄子の友人。夫からDVを受けている。
小夜子(さよこ)
地元の酒屋に嫁いだ澄子の同級生。大のウワサ好き。
美佐緒(みさお)
中学、高校時代の澄子の友人。大学進学クラスに編入したことで疎遠になる。現在は東京暮らし。千鶴から離婚したとのウワサを聞く。
林田 よし子(はやしだ よしこ)
同じく澄子の同級生。マンガ家。ペンネームは星川リンダ。何かの作品で30万部を突破したらしい。
千鶴たちはよし子のことが気に入らないりしく、話が出るとこきおろす。
望美(のぞみ)
澄子の娘。33歳。結婚はせずに東京で働いている。
母親や結婚した妹に同情している。未婚。
香奈(かな)
澄子の娘。30歳。名古屋在住。一人息子がいる。夫もいるが全く家事をしないのでワンオペ家事と育児で疲れ切っている。
原田 孝男(はらだ たかお?←ふりがなナシ)
澄子の夫。澄子より1つ年上の59歳。大卒で地元の工務店にコネで入り、そのまま人事課に勤める。暴言や暴力を澄子に振るうわけではないが、とにかくモラハラ野郎。キャバクラに通い詰めて、澄子が貯めていた30万円を使い込む。
自分の人生を取り戻す物語
この小説は、タイトルの通り58歳の主婦が夫と別れる話です。
澄子の夫、孝男のモラハラがこれでもかって書かれているのが特徴で、モラハラに遭ったことがある人だったら「あー分かる!」ってなるかと思います。
澄子がどう決断して自分の人生を取り戻すのか。「自分の人生」とは何なのか。めっちゃ見せ場!ってシーンはないのですが、垣谷さんの緻密な心理描写でひたすらぐいぐい読ませていきます。
今までの垣谷さん作品とちょっと違う?
まあそれほど垣谷さんの小説を読んでいるわけではないのですが。
「定年オヤジ改造計画」でも「七十歳死亡法案、可決」でも、主婦の大変さを全く理解していない夫が出てくるのですが、実際に家事や育児の大変さを体験した夫が「妻はこんな大変なことを毎日してたのか!」って心を入れ替えたりするのですが、この本のモラハラ旦那はそんなことはなく、最後までわかりあえないまま終わった…。
まあ現実ではこれが普通だと思う。うちの会社のモラハラ男たちも何回も会社のヘルプラインに訴えられてるのに「なんで俺が?」みたいな感じやし。まあ訴えられても給料が下がるわけでもないですしね😓
モラハラって周囲にわかりにくい
モラハラって基本的にパワハラやセクハラみたいな「これ!」っていう決定打に欠けるのでなかなか周りに理解してもらえないんですよね。主人公の澄子も他の人に説明するのに「性格の不一致」って言ってたし。
しかもモラハラするタイプって、他の人にはしないけど「コイツは何言っても大丈夫」みたいな人には容赦しないから、こちらが被害を説明しても「え?あの人が?」って信じてもらえないことが多い。
たとえ虐げられたとしても…(ネタバレ)
夫からの暴力に悩む友人の千鶴ですが、肋骨と骨盤を骨折するという大怪我を負わされ、結局離婚することになりました。
その話を小夜子から聞かされるのですが、小夜子の
「千鶴は惨めな女なんかとちがうわっ。あの子は高三の時バスケ部のキャプテンで、ゴッツかっこええ女の子やったんやから」
という言葉に号泣。
小夜子…ただの口の軽いおしゃべりおばさんだと思ってた。ごめんやで…と思った5ページ後には澄子の秘密を街中に喋ってて笑ってしまった。
まあ、それも澄子の作戦だったわけですが。
結婚が当たり前だった時代に結婚し、そして苦しんだ澄子。月12万円もパートで稼いでたのに下に見られるってやばすぎる…。
やっと自由を取り戻した澄子の人生を応援せずにはいられないラストでした。