団塊世代の男女の物語
特大帯に「絶対映像化出来ない物語」みたいなキャッチが描かれていたので、どんなもんやろ?と思って購入しました。
主な登場人物
富岡 康宏(とみおか やすひろ)
1949年生まれ。いわゆる団塊の世代。
大学の時は学生運動に参加していたが、就職したあとは典型的な会社人間となり、出世レースに邁進。が、バブル崩壊とともに康弘は出世街道から外れ、子会社に出向となる。後に父の介護のために早期退職。父を看取ったあとに東日本大震災が起き、被災地に行きボランティアとして活動。被災地から引き揚げたあと四国巡礼。帰りのフェリーで行方不明になり、4日後に遺体が発見される。享年62歳。
結婚して娘が二人いるが、学生時代の恋人、紘子と再会したあとはズルズルと不倫関係に。
笹岡 紘子(ささおか ひろこ)
康宏の不倫相手。康弘と同じ大学に通っていた。学生運動の際、襲われていた紘子を康弘が助けたことがきっかけになり、恋人同士に。意見の不一致から別れるが、康弘と偶然再会したのち不倫関係に。
道徳的、社会的な慣習に因われないいわゆる「フリーセックス」な考え方の持ち主。
富岡 碧(とみおか みどり)
康弘の次女。二十代後半の会社員。康弘が亡くなったあと、父の軌跡を辿るために四国巡礼に赴く。
康弘にも紘子にも全く共感できなかった…
康弘…紘子と別れなさすぎやん。しかも都度都度肉体関係になっては家族にバレての繰り返し。
そんなに紘子のことが忘れられなかったんかな?と思ったけど、四国巡礼の時に知り合った女性ともズルズル肉体関係を持ってしまってるし…下半身ゆるっゆるやないか!と思わずツッコんでしまった。
紘子のほうもフリーセックスな考えのせいか?康弘の奥さんや家族のことを全く考えない。
…いや、ちょっとは考えて。
紘子は自分の考えを押し通すことばかりに執着する性格で、周りの状況とか人の気持ちを一切考えないような描写がたびたびあり、読んでいても「何だかなあ」と感じてしまった。しかも最後は孤立したまま生涯を閉じることになってしまった模様。
私はこの二人の人生から、何を感じ取ればええんや?
…これがジェネレーションギャップというやつか?もし康弘や紘子と同じ団塊の世代の人たちがこの本を読んだら「うわ〜わかりみ」とかなるんやろか?
碧という存在
碧は康弘の次女。母親と姉は康弘が不倫をしたこと、そして最期まで紘子のためにお遍路までしたことに激怒しているのですが、どこか憎みきれない碧。父親が遺した手帳を元に四国に出かけ、父親の旅路を訪ねて回ります。
正直、康宏と紘子だけで話が進んでいくと辛いところがあったので、こちらと私と感覚が近い碧が断片的にでも物語に入ってくれたことでグッと読みやすくなった気がする。
誰かが下した評価はその人のすべてではない
碧は、父親の四国巡礼を追うことで自分が知らなかった父親の姿を知ることになります。父親に感謝している人がいること、そして自殺だと知らされていた父親が、実は自殺ではなく、最後に家族が幸せだったころの写真を撮ろうとしていたこと。
紘子も周囲から孤立し、孤独のうちに亡くなった描写だったのですが、死後、有志から紘子のことをまとめた本が出版されます。
誰かにとっては最悪かもしれないけれど、他の人にとってはそうではないこともあるのかな?と最終章を読んで思いました。
それにしても碧がいい感じに誤解してくれて終わったので助かったのでは?もし最後に助けたお遍路さんの女性とズブズブの関係になってしまったことがバレてたらシャレにならないところだった。
ちょっと残念なところ
康宏の気持ちがほぼ曖昧なこともあり、推測だけで終わってしまった。
四国巡礼に旅立った理由も、最期に家族と過ごした島の夜景を撮ろうとした理由もふわっとしてるように感じた。
ふわっとした感情とは裏腹に、やってることは赤裸々に描写されているので、どうしても主張が強い方に引っ張られてしまうなあ。