なつくの気まぐれ日記帳

いろいろ起こったことや感じたことを書く雑記ブログです。

【小説】滅びの前のシャングリラ

小惑星が地球に衝突するまでの1ヵ月間

主な登場人物

江那 友樹(えな ゆうき)

17歳の男子高校生。小太りでいじめられている。現在の世界に希望が持てず、世界の終わりを願っている。クラスメイトの藤森雪絵が好き。

藤森 雪絵(ふじもり ゆきえ)

友樹のクラスメイトの女子高生。黒髪ロングの美少女。歌手のLocoが好き。養女として藤森家に引き取られたが、後に夫婦の子どもが出来、それ以来疎外感を感じている。

目力 信士(めぢから しんじ)

友樹の父親。40歳。両親から虐待されて育った過去を持つ。成長後は非行に走り、チンピラに。現在はカジノの雇われ店長をしている。兄貴分のヤクザに頼まれて殺人を犯す。ケンカがめちゃくちゃ強い。

江那 静香(えな しずか)

友樹の母親。40歳。信士と同じく両親に虐待されて育った過去を持つ。信士と同棲していたが、信士の暴力からお腹の子ども(友樹)を守るために逃走。以来、女手一つで友樹を育てる。

山田 路子(やまだ みちこ)

29歳の歌姫。大阪育ち。仲間とバンドをやっていたが、東京でスカウトされアイドルの道に。全く売れなかったが、後に大物プロデューサーと出会い路線を変更。神秘的な歌姫Locoとしてとして一世を風靡する。しかし、周りに流されて自分を見失い心を病む。徐々に人気に翳りが見え始めたところに、恋人(大物プロデューサー)から別れ話を切り出され、逆上して恋人を殺してしまう。

世界の終わりを前に、自分の居場所を見つける人たちの物語

この小説は、複数の登場人物が自分の心理状態を話しながら終末に向かっていく話なのですが、友樹は高校で結構ないじめに遭い、信士はうだつの上がらないチンピラのまま、兄貴分のヤクザに殺人を命じられます。雪絵は特にいじめや虐待などはないものの、養子である自分と両親の実の娘である妹との間に壁を感じていているなど、現実世界で「上手くやれない」人ばかりが出てきます。この人たちが、世界の終末に対してどう行動し、自分なりのシャングリラ(理想郷、桃源郷)を見出すのか─という話になっています。

小惑星の直径は推定約10km

木星と同軌道にあるトロヤ群から飛来。落下時刻は日本時間15時。落下地点は南太平洋。
直径10kmって大気圏で燃え尽きないのかな?と思って調べてみたけど、それくらいの大きさになると表面上が少し削れるくらいらしい。
それどころか、近づくにつれてだんだん明るくなっていき、衝突する直前になると昼間でもうっすら見えるようになるのだとか。怖すぎる…。

【悲報①】政府、またやらかす

伊坂幸太郎さんの「終末のフール」でもそうだったけど、なんで政府、何の策もないのに小惑星衝突を公表しちゃうん?しかもそのあとは行方をくらまし無政府状態に。お前そんな中途半端なことしたら…。

【悲報②】力こそ正義、ヒャッハー!な世界に

そらみたことか。
残り1ヵ月を待たず、人々は暴力に走りインフラは崩壊。電気はかろうじて通り、インターネットは何とか繋がる状態になるんだけど、食べ物も日用品もない世界に。
この小説では何月なのか書かれてなかったけど、夏か冬だったら1ヵ月を待たず日本人ほぼ全滅してた。特に今年の夏の暑さよ…。
この小説の設定だと「もし明日世界が終わるとしたら?」とか甘っちょろいことを思っている暇ないよなあ。インフラが整っていてこそ「やりたいこと」をする選択肢があるんだもの。私だったら一瞬で死んでる。
実際、友樹たちも父親で喧嘩がめっぽう強い信士頼り、路子も犯罪に慣れている地域のコミュニティ頼りで最期の日を迎えることになります。

疾走感がすごい

1ヵ月という期限付きのせいかスピード感がえぐい。そして色んな登場人物の心情が丁寧に描かれていて、中だるみがなくぐいぐい読んでしまいました。さすが凪良ゆうさん!

 

あと、蛇足なのですが路子は大阪育ちなんだけど、友樹たちは広島育ち。路子は関西弁で喋ってるんだけど、友樹たちは広島でなぜか標準語で喋っています。雪絵が東京に行きたい!と言っているのを見て「え?そこ東京じゃないの?」と何回か読み直しましたw