七十歳で安楽死することが法案で可決
垣谷美雨さんの小説は2冊ほど読んだことがあり、どれも面白かったので手にとってみました。
主な登場人物
宝田 東洋子(たからだ とよこ)
55歳の専業主婦。学生の頃は有名大学で栄養学などを学んでいた才媛だった。一男一女の母。現在は義母の世話に追われている。
宝田 菊野(たからだ きくの)
東洋子の義母。84歳。大腿骨骨折のため寝たきりになる。10年以上も東洋子が介護している。
宝田 静夫(たからだ しずお)
東洋子の夫。58歳。会社員として働いていたが、七十歳死亡法案が可決されたことにより早期退職。友達と世界旅行に旅立つ。
宝田 正樹(たからだ まさき)
宝田家の長男。29歳。有名大学を卒業後、大手銀行に勤めていたが、上司のパワハラに遭い退職。以後、就職出来ずに引きこもりとなる。
宝田 桃佳(たからだ ももか)
宝田家の長女。30歳。東洋子に「会社を辞めて祖母の介護をしてほしい」と頼まれたことをきっかけに家を出て一人暮らしを始める。現在は特別養護老人ホームでヘルパーとして働いている。
馬飼野 礼人(まがいの れいと)
現職総理大臣。七十歳死亡法案を提出、可決させた張本人。
リーマン・ショックから数年後の話
刊行されたのが2012年。リーマンショックでの円高株安、2011年には東日本大震災と大変な時期だったことを思い出しました。
そのせいか、登場人物のほとんどはこの法案に賛成している世界なんですよね。もちろん反対している勢力もありますが。
義母の介護に追われている主人公の東洋子は「あと2年で介護から解放される!」と希望で一杯になっています。
専業主婦は一人で家事、介護をするのが当たり前?
実際の家庭ではそうではない例もあるのでしょうが、この本での東洋子の扱いよ…😢
義母の世話を24時間こなし、引きこもりの正樹の食事まで。なのに義母は感謝の言葉すらないし、生前贈与の席にも呼んでもらえない。
正樹も引きこもってるくせに何もしない。桃佳は家を出て寄り付かず、夫の静夫は退職後、友達と世界旅行に。東洋子の絶望がこれでもかと伝わってきます。
出来る範囲で自立することが大事(ちょっとネタバレ)
結局東洋子は家出し、残された人々で家事を分担し、知り合った人たちの力を借りて問題を解決していくことになります。
東洋子の今までの苦労は…。
結局、全部を一人に任せておんぶに抱っこになってしまうとろくな事にならないっていう。これは色々抱え込みがちな私にも言えることだな〜と感じました。
無理はしない。これ大事。
「男のオレじゃ出来ない仕事」ってなに?
私は、登場人物の中では一番正樹にイライラしていましたw
東洋子の家出後、連絡してきた桃佳に当然のように祖母の世話を押し付けようとしていたし。
垣谷美雨さんの小説では「定年オヤジ改造計画」でも主人公が同じセリフを言っていましたが、私の兄も言っていました。しかも正樹と同じく無職の時に。
そりゃ個人差があるので向き不向きとかはあるとは思うのですが「男だから」家事や介護、育児はやらなくていい?そんなわけあるか〜!
馬飼野総理を許すな(こちらもちょっとネタバレ)
最悪の法案を出したあと、そのあとサラッと大増税政策を打ち出した馬飼野総理。
こいつだけは次の選挙で落とさないといけない(使命感)。
この時代の小説に書かれる政治家って当時のマスコミの影響なのか、増税する総理が理想、みたいなスタンスで書かれることがとても多い。
政治家の仕事は国民を不幸にすることじゃないんやで。
同じ本を2冊買ってしまった…
私は本を買う時は、中身を見ずに作者とタイトル名を見て買うのですが、今回見事にやられました…。右の本「母、家出します」ってタイトルだと思ってたわ。よく見たら右下に小さく「七十歳死亡法案、可決」ってタイトル書いてるやん!こういう紛らわしいカバーはマジでやめてほしい…。